発達障害の人が陥りがちなパニック。
他の人から見れば些細なことなのに、感情的になって、自分でもそれが抑えられなくて混乱してしまう。
そして、自分でそれを止めることができない。
パニックを起こしてしまう自分がしんどい。

お薬だとか、環境を変えたりだとかで改善することもあるので、対処法はひとつではないのですが……
私は認知行動療法と森田療法を勉強して、少しだけ対処できるようになった気がします。
といっても、パニックが完全になくなったわけではないのですが、「しんどさ」は多少マシになりました。

パニックの過程を分析・可視化し、自分の思考パターンを変えていくのが認知療法。
歪んだ認知を修正し、新しい行動パターンを作っていくのが行動療法。
認知行動療法は、この2つを組み合わせたものです。

そして森田療法は、不安を「あるがまま、ありのまま」に受け入れていく考え方。

先日、オンライン会の後にDiscordで少しお話させていただいた内容+αをまとめていきます。


1.パニックの正体は「自動思考」

パニックの形は人それぞれ、原因も様々ですが……
だいたい「極端な思考」「認知の歪み」が原因になってることが多いと思われます。

ASDは特に「こだわり」「自分の中のルール」が厳格なので、そこから外れると混乱しがち。
そして、自分の感情をコントロールするのが下手なので、混乱して爆発した感情が制御できず、パニックに陥りがちです。

この「極端な思考」は自動的に起こるものなので、自分でも自覚していないことが多いです。

パニックに振り回されてしまう人はたいてい、自動思考の罠にハマっています。

この自動思考とはどういうものなのか、以下で説明していきます。

2.歪んだ認知の中身

ちょっと極端な例ですが、
「遅刻した。死のう」
っていうパニックを起こしているとします。
これは「遅刻」というものを「歪んで」とらえていることが原因です。
「遅刻」と「死ぬ」の間にある思考を整理していきます。

「遅刻した」
「社会人として失格だ」
「上司に怒られた」
「自分はいつもこうだ、遅刻ばかりするダメ人間だ」
「ダメ人間は生きてる価値がない」
「死のう」

ざっくり言うとこんなプロセスです。
「遅刻したショック」を過大にとらえ、自分を卑下して、思考のぐるぐる渦巻きにとらわれて際限なく落ち込んでいる状態。
ついでに「遅刻ぐらいでパニックを起こしてしまうなんて」という混乱も入っていたりします。

このプロセスを、「自動」で行ってしまっているので、しんどくなるのです。

3.自動思考のパターンを知る

ここでは10の例を挙げていきます。

【白黒思考】
「5分も遅刻してしまった。もうだめだ。」
0か100か、白か黒か、全か無か。どっちつかずのグレーが存在しない思考です。
「遅刻はしたが、欠勤はしなかった」
「5分の遅刻で怒られて、ちょっとだけ給料が減ったけど、クビになったわけじゃない」
と、「ダメなところもあるけど、いいところもある」と、中間の「グレー」を探してみましょう。

【一般化のしすぎ】
「みんな遅刻なんてしていない。自分だけがダメなのだ。自分のことをみんな最低だと思っている」
良くないことは1つだけなのに、世の中全てがそうであるように考えてしまう思考です。『みんな』がキーワードです。
「遅刻したって、気にしない人もいる」
「他にも遅刻してる人はいる」
「遅刻してしまう自分を面白がってる人もいるかもしれない」
人の考え方はそれぞれ、とらえ方もそれぞれ。

【心のフィルター】
「遅刻した……遅刻……遅刻した……」
良くないことを延々ぐるぐる何度も何度も考えてしまう。
要するに、切り替えが下手くそなんですね。
遅刻したとしても、その日の仕事を集中して頑張ればそれでいいのに、頭の中で「遅刻」のダメージを引きずって余計に失敗したりしますね。

【マイナス化思考】
よい出来事を無視してしまう。
「寝坊して、忘れ物をして、朝の洗濯もできず、頭はボサボサで遅刻、何もかもダメだ」
でも、悪いことばかりじゃなかったはずなんです。
「でも、駅員さんと目が合って挨拶できた」
「朝ごはんはちゃんと食べた」
些細なことでいいから、「プラス」を見つけていきたいです。

【結論の飛躍】
根拠もないのに悲観的な結論を出してしまう。
「遅刻ばかりして、自分はクビだ」
そりゃ、たぶん、遅刻のせいで上司の評価は下がるでしょう。
でもそれですぐクビになるわけじゃありません。
評価が下がったとしても、別の部分で挽回できるかもしれない。
そこを無視して、結論を急いでしまうと辛いですね。

【拡大解釈と過小評価】
自分の失敗を過大に考え、長所を過小評価する
遅刻はするけど、仕事は丁寧。
お皿は割っちゃうけど、接客の笑顔は丁寧。
たぶん人間だれでも、「いいとこもあれば、悪いところもある」のです。

【感情的決めつけ】
理性的にものごとを評価せず、自分の感情で評価してしまう
「遅刻は、最低だ!」
ここで『最低だ』と思っているのは、『自分の感情』です。
会社の規則では「遅刻したら、そのぶん減給」となっているかもしれません。
でも規則には「遅刻は最低」とは書かれていないはず。

【すべき思考】
「社会人なら当然、きっちり時間を守るべきだ」
「遅刻なんてすべきではない」
キーワードは『べき』です。絶対にこうしなければならない、というルールって、案外少ないものです。
時間にルーズでも社会人やってる人、ざらにいます。
そりゃ時間を守った方がいいのは確かですけど、すぐに何らかの罰を受けるわけではないんです。

【レッテル貼り】
「遅刻するなんてダメ人間だ」
「自分はいつもこうだ」
「どこに行ってもやっていけない」
すぐに自分にレッテルを貼ってしまって、自分で自分の首を絞めている状態。
別に、遅刻してもダメ人間ってわけじゃありません。
遅刻が多いかもしれないけど、やっていける場所はあるかもしれない。

【個人化】
「上司が今日イライラしているのは、きっと自分が遅刻したからだ」
何もかも自分のせいだと感じてしまう。
でもね、たぶんその上司のイライラの原因は他にあります。
今日は雨なのに、外に洗濯物を干してきちゃったとか。
昨日から胃腸炎でお腹痛いとか。

 

当てはまるものはあったでしょうか。
私は全部当てはまります。

「お腹痛い……胃潰瘍かも……いや、胃がんかもしれない……」【結論の飛躍】
「いい年して仕事もしてないなんてクズだ、ニートだ、何の価値もない……」【感情的決めつけ・レッテル貼り】
「子供がアトピーになった……家の掃除ができない私のせいだ……いつも怒ってストレスをかけてしまうからだ……母親なら家をきちんと掃除すべきだ、自分は母親失格だ、生きてる価値なんてない……」【個人化・べき思考・レッテル貼り】

だいたい複合してやってきます。手強いです。

でも、パニックになった時に、一呼吸おいて考えることができるようになったら、一歩前進。
「自分の考えは、こんな風に歪んでるんだな」
「あ、また自動思考に陥ってる」
「これは白黒思考だな」
パニックの真っ最中には難しくても、後から考えを整理・修正していくのは、かなり効果的です。
同じパターンになった時に、「修正後」の思考を持ってくることができるから。
「あ、また遅刻しちゃった。でも、クビになるわけじゃない。これで仕事やめたとしても、別に生きていける。また次の仕事見つけたらいいや」
って思えたら、しめたものです。
同じパターンのパニックを繰り返している人には、すごく有効だと思います。

4.森田療法

不安を「あるがまま、ありのまま」に受け入れる森田療法の考え方も、パニックに効きます。
「またパニックになってる! どうしよう!」という混乱は、かなり辛いです。
「死にたい」と考えてしまう自分も、辛いです。

パニックを起こすのも、死にたいと思うのも、確かに健康ではないかもしれない。
でも、「それが自分」なのです。
「死にたい」自分を「あるがまま」に。
「ちょっとしたことでパニックを起こしてしまう」自分を、「ありのまま」に。

パニックを起こしてもいいんです。
それが自分だから。
パニックを起こして、周囲から奇異の目で見られるのが怖い。
でも、パニックを起こす自分は、そういうものなんです。
それが自分の普通なんです。

死にたいって、毎日のように思ってる。
でも自分はそういうものなんです。

「パニックを起こしてはいけない」という気持ちでいると、パニックを起こした時に自分が許せなくて、余計に混乱します。

パニックを起こしてもいいです。
そういう生理現象なんです。
サツマイモ食べたらオナラが出るんです。
眠くなったらあくびが出るんです。
なんかあったらパニックになるんです。

ぐらいに、自分を受け入れていきたいです。

5.ASDは感情が分からない

「人の気持ちが分からない、ロボットみたい」なんて言われてしまうASD。
でも、実際に感情がないわけじゃない。むしろ人よりたくさんの感情を持っていたりします。ただ、その出し方、処理の仕方がわからないだけです。

そして、ASDが何よりわからないのが「自分自身の気持ち」です。

今起こしているパニックが、怒りなのか?悲しみなのか?嫉妬なのか?悔しいのか?
感情が爆発しているんだけど、その感情が処理できなくてパニックになっている。

生まれたばかりの赤ちゃんの感情は「快」と「不快」の2つしかありません。
快ならスヤスヤ眠り、不快なら泣く。

ASDのパニックは、たぶん、これに近い状態です。
なんかわかんないけど負の感情が溢れて止まらなくてコントロールできない。

この状態を何とかするには、感情に名前をつけてラベリングすることが必要です。

実は私、まだこれができてないんで、なんとも言えません!
一人じゃたぶん、これ、難しいです……

感情を整理するのが下手くそな自分を、まず認める。
少なくとも、パニックに対処するための最初の一歩はそこです。

まとめ

認知行動療法に本気で取り組みたいなら、対応してくれるメンタルクリニックやカウンセリングルームを探すのが一番の近道だと思います。
ただ、ワークブックがたくさん出ているので、自分でも頑張ればできないこともないです。
私は独学でどうにかこうにかって感じです。
以下にいくつか紹介しておきますので、興味があればぜひに。
ここに紹介した以外にも、たくさん出ておりますので、合う本を探してみてください。

参考図書:

「図解 やさしくわかる認知行動療法」
https://www.amazon.co.jp/dp/4816352732/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_ijfhDbYBR0W6P

「こころが晴れるノート:うつと不安の認知療法自習帳」
https://www.amazon.co.jp/dp/442211283X/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_2kfhDbYA6P54R

「森田療法」
https://www.amazon.co.jp/dp/4061488244/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_PlfhDb7VRF6Z6

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